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Rambler love peace

~世界の片隅から~

須藤凛々花という衝撃~『人生を危険にさらせ!』を読んで~

 NMB48チームNの須藤凜々花さん(以下、りりぽん先輩)が、3月30日に『人生を危険にさらせ!』という哲学に関する本を出したということで、この本の感想をツラツラと。

感想というより、りりぽん先輩に捧げるラブレターだ。


須藤凜々花について

 わからない方にりりぽん先輩の説明をすると、2013年の11月に行われた「第1回AKB48グループ ドラフト会議」において、NMB48チームNに第1巡目で指名されるも、翌年の7月に網膜剥離のため1ヶ月休業。

その後、2015年の11thシングル『Don't look back!』で初選抜、12thシングル『ドリアン少年』で初センターに抜擢される。
また、入った当初より哲学が好きなことを公言しており、将来の夢は哲学者。
SNSでその独自のアイドルらしからぬ哲学思想やチーム愛溢れる投稿を行い、たびたびファンの間で話題になる。
今回の企画はりりぽん先輩が幻冬舎の見城社長とSNSで哲学談義をしたことから始まったという。

一部のファンの間では、彼女のその賢さから哲学に関する本の出版を願う声が出ていたが、出版社の社長に見初められるということで形になったとも言える。

 

この本の特徴

 今回の本は哲学に関する本だが、哲学よりだが社会学や政治学なども包括的に取り込んだ入門書と言えるのではないだろうか。
これは、日本図書館コード(Cコード)の分類が「哲学(下二桁が10)」ではなく、「日本文学、評論、随筆、その他(95)」ということからもうかがえるし、対談相手となった堀内先生の専門が哲学ではなく政治社会学ということからもわかる。


ただ哲学本として出すと哲学の解説に終始してしまい、なかなか一般の人には苦しいものがあるので、それを考えると社会学の先生と普遍的なテーマを議論したのは良かったと思うし、個人的にはりりぽん先輩の新たな可能性を見出せた気がする。


以上のように書いたが、完全な入門書というわけでもない。

なぜなら、ギリシア以降の西洋哲学に必要な宗教(主にキリスト教)の精神的な機軸の説明が抜け落ちてしまっているからである。

これを抜きに、この本で議論されている「愛」や「正義」、「自由」を理解することは難しい。

また、紹介されている多くの先駆者の思想を理解することも難しい。

その意味において、前提となる宗教の部分にもページを割いて欲しかった気がする。

しかし、りりぽん先輩が独学で読んできた哲学書だけでなく、社会学、政治哲学、哲学史社会学史を勉強して学んできた結果が大いに詰まった本である。

マンガや本、映画などについての捉え方は、哲学や思想を行おうとする者のセンスの良さが感じられた。

ONE PIECE』には哲学的要素が詰まっているとりりぽん先輩は言っているが、数年前に同じようにこれをテーマに課題だか講義だかで使ったと自分の先生から聞いたことがある。

 

りりぽん先輩が進む道は思想の世界だ


 彼女が本当に目指すべきは哲学の世界ではなく、思想の世界だと個人的に思う。
理由はいくつかあり、「自由」や「正義」について考えると分野はかなり政治学や政治哲学でもやっている仕事である。

今回出てきたプラトンホッブズ、ルソー、カントなどは、政治学や政治哲学を学ぶ上では、決して外せない思想家であるからだ。

また、ロールズの『正義論』も最近(2010年)に新訳が出て、日本でも改めて注目が集まった本である。

ただ、これらは西洋的な思想なので、キリスト教的な考えが絶対に必要になるし、場合によっては社会学、哲学まで手を広げる分野だ。

 

社会学という文脈では、M.ヴェーバーの『宗教社会学』や『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などは読んでおく必要があるし、ハイネの『ドイツ古典哲学の本質』なども哲学、思想の流れを整理するのに役立つ本である。

西洋の宗教の考え方を学ぶという意味では、南原繁の『国家と宗教ーヨーロッパ精神史の研究ー』は戦中に出版された本だがしっかりとした本だ。

 

正義の項の後にあるコラムでお伽話についてりりぽん先輩は語っているが、これと同じようなことを思想史家の藤田省三が「或る喪失の経験」で述べている。

もちろん、藤田省三の方が「隠れん坊」や「お伽話」をテーマに論文を書いているので、深みはあるのだが、ポーンと直感でそのような発想をしているりりぽん先輩はやはりその片鱗があると言える。

個人的にはりりぽん先輩のもやもやしていることは、時代は違えど藤田省三が持っていた価値観に近い気がするので、ぜひ読んで欲しいと思う。

 

りりぽん先輩には、哲学だけではなく社会学や社会思想、政治学、政治思想史など色々なことを学んで欲しい。

が、最終着地点として哲学より枠が広い思想の世界に行きつき、「哲学者」ではなく「思想家」になって欲しいと思う。

 

りりぽん先輩を同じかほりを持った者として推す

 こんなツイートをしたのだが、これは大真面目にこの本を読み始めて感じたことだ。

恥ずかしいことを言えば、改めてりりぽん先輩に「惚れた」のである(笑)

"改めて"というのは、りりぽん先輩が哲学が好きで、それをブログやTwitter等で見てからずっと気になっていたからだ。

政治学や政治思想史関係を少し齧った者としては、りりぽん先輩の思考性は好きだし、こういう子こそ伸びて欲しいと思っている。

この本は、決して売ることだけのためにつくった本じゃない。一方的に、消費されるだけなのは嫌だ。より多くの人に読んでもらって、考えるきっかけにしてもらいたかった。

―あとがきより―

このりりぽん先輩の願いが、この本を読んだ全員に伝わって欲しいと願っている。

そして、本として「消費」するのではなく、「世界」を考えるきっかけになってほしい。 

 りりぽん先輩がアイドルだろうがそうじゃなかろうが、彼女が少しでも表舞台にいるのなら彼女がこの理不尽な世界とどう戦っていくのか見ていたいし、応援していきたいと思う。

偉大なる哲学者思想家須藤凛々花の未来に幸あれ!!

 <了>

人生を危険にさらせ!

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ドリアン少年 (通常盤Type-A)

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正義論

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ドイツ古典哲学の本質 (岩波文庫 赤 418-5)

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精神史的考察 (藤田省三著作集 5)

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