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~世界の片隅から~

「倒れるときは前のめり」感想―小屋裏より愛を込めて―

愛してやまない作家の1人、有川浩さんの初エッセイ集「倒れるときは前のめり」が発売されたので、早速購入し、読了。

内容としては、デビュー時から主に新聞や雑誌に掲載されたエッセイやコラムを集めた感じ。なので、同じような内容が続いたりとかするが、それはご愛嬌。

 

有川浩さんの作品との出会いや愛は、映画「図書館戦争 THE LAST MISSION」の感想をブログにあげようと思い、お蔵入りしてたので、ここで引用。

映画「図書館戦争 THE LAST MISSION」を鑑賞してきた。
アニメ版、実写版とずっと追ってきた自分にとって、このシリーズはこれで最後かと思うと感慨深いものがある。いや、自分が大好きな手塚と柴崎の話をみたいから、是非スピンオフドラマお願いします。
そもそも大学2年ぐらいにノイタミナ枠でやっていたアニメ版の「図書館戦争」をたまたまみたのがきっかけ。

本が好きだし、この設定が非常に面白い設定だったので、「図書館戦争」シリーズを一気に集め、そこから有川浩沼へ落ちる。

発売された初日に購入しているレベル。てか、大事なときに使う言語のほぼ大半は有川作品からの引用が多いかもしれない。

政治学かなにかの講義で「図書館戦争」を題材にレポート書いてしまったこともある。もはや、思想レベルにまで落とし込まれてる。

 

で、今作品について。

過去に書いたものだからこそ、忘れてはいけないことがあると改めて思わされることが多い。

東日本大震災(その当時)の話、 東京都青少年健全育成条例の改正の話、難聴者の話、出版業界の話等々、一過性の話題に上がっては年数と共に片隅に追いやられる話題。改めて読むと、気づかされることが多い。

 

94編のエッセイと2本の小説で成立しているが、内容がかぶらないように激選10本だけ選ぼうと思う。

 

・「読書は遊びだ」(P.28~)

東京都青少年健全育成条例の改正問題についてふれた文章。*1

条例による出版物への規制ということで、当時大いに盛り上がったし、コミケがどうなるかという話まで出てきてた気がする。

 都による条例とはいえ、出版社が東京に集中している以上、自主規制にならざるを得ない。

「リアル『図書館戦争』」とも一部では言われたが*2表現の自由に関する権力による検閲は許されない。

権力は身近にあるということを改めて認識させられた事だった。

 

・「「自粛」より楽しんで経済貢献を」(P.46~)

2011年3月11日の東日本大震災直後のお話。

当時は「自粛」、「不謹慎」という言葉が飛び交い、周りを気にする風潮で、時代に閉塞感を非常に感じてた気がする。

この時は有川さんと同じように「自粛」するのではなく、お金を使い経済貢献をすることが、被災地にできる精一杯のことではないかと思い、生活していた。

災害はいつ起きるかわからない。そうなった時の危機意識、復興への対応として一考しておく時期なのかもしれない。

 

・「未来への投資」(P.94~)

出版業界のお金の周り方や新刊と文庫の違いをざっくりわかりやすく、説明してくれている文章。

本読みからすると全部を全部、書店で買うのはやはり財政的に厳しいものがある。

しかし、できるときに少しづつでも「書店で買う。」、「新刊で買う。」ということを行っていくことが、より業界に貢献できるのではないかと思う。

単に「本を買う」という行動一つについて、改めて深く考えさせられる内容。

去年に有川さんが始められたブログでも、大いに語ってくれているので、是非。*3

 

・「「嫌い」と公言 慎みたい」(P.100~)

この文章を読んだ時に思い出したことがある。

当時気になっていた人がツイートで同じようなことを言っていたり、直接言われたことが脳裏をかすった。

言われた時も非常に納得したし、直接聞かれた時は「苦手」などと言い、はっきり「嫌い」と公言しないようにしてきた。

「嫌い」と言ってしまい拒否をすることで、別の良い面の可能性をも閉じてしまうことになると思っている。なので、一面だけをみて「嫌い」と言わないように心がけている。

「好き」であるという感情は共感を呼びやすいが、「嫌い」という感情はネガティブなので広がりはなく、むしろ狭めていく。

言葉の使い方は、「匿名の毛布」(P.154~)でも書いているので、是非。

自戒をこめて、この言葉は大切にしていきたい。

 

・「自作解説 in 2006」(P.103~)

 2006年当時に発売されていた『塩の街』、『空の中』、『海の底』、『図書館戦争』、『図書館内乱』、『レインツリーの国』、『図書館危機』、『クジラの彼』についての筆者による解説。

一番の驚きは、『空の中』の宮じいにモデルの人がいたということ。このモデルになった方の話は別の箇所でもでてきます。

筆者による作品への思いや意図というものがわかり、改めてその視点で作品を読み直すのもありかも。

 

・「書店はテーマパーク」(P.126~)

題名の通りです(笑)

あとは、読んでください。理由はわかります。

 

自分は、図書館もテーマパークだと思っちゃう口です。

特に閉架とか、最高!!場所によっては、携帯の電波すら入らないので誰にも邪魔されません(笑)

そして、既に廃刊となった作品にも会えます(笑)

 

てなわけで、書店と図書館はテーマパークです。(←ここテストでます)

 

有川さんによる好きな本の紹介もあるので、読んでみて気になった本を読んでみて、自分の幅を広げるのも大いにアリだと思います。

 

・「読んでおいしい本」(P.136~)

正直、「心に響いた一文」(P.179)と悩みました。でも、こちらを選びました。

なぜなら、向田邦子の随筆をここまで読んで、その料理を作りたいと思わせる文章は少ないからだ。

あと、『植物図鑑』でも使われている「料る(りょうる)」という単語についての解説もあって、ますます「料る」という語が好きになった。

 

向田邦子は自分が生まれた頃には既に亡くなっていたのだが、実家に本があったのがきっかけで読み始めた。本当に何度読んでも面白い。そこはかとなく昭和のかほりを感じることができるのも、要因の一つなのかもしれない。

向田邦子作品に触れたことない方には、ぜひ読んでいただきたい。

 

・「エロを感じる瞬間」(P.225~)

 ある映画のラブシーンを有川さんが文章に起こしたストーリーから始まる。

いや、この文章の官能的なことといったら。

官能の話から恋愛の話までしてて、エッセイとして非常に読み応えある。

この方が語る恋愛観は本当に深い。

 

・「児玉清さんのこと」(P.234~)

有川浩ファンにとっては、避けては通れないのが、故・児玉清氏。

文庫版『図書館戦争』の対談インタビュー、映画『図書館戦争』にも出演等々この方が残した功績は大きい。

あの対談インタビューが奇しくも2011年3月11日に行われたのは、偶然ではないのかもしれないと、外野から思う。

この文章を読んでいると、児玉さんの人間性というものが本当に感じれるし、まだどこかで生きていらっしゃるんじゃないかと思ってしまう。

同じ有川浩ファンとして、もっと解説を読みたかった。

 

・「彼の本棚」(P.307~)

短編小説。話としては、本当に出だしのみ。

共通で読んでいる本から、どう発展していくのか。

この後、どういう物語になっていくのか気になるところ。

首を長くして待つことにします(笑) 

 

 

以上10編を選んで、感想なりを書いてみました。

他にも本や映画の紹介、地元高知県のこと、「鉄腕ダッシュ」のことなど多岐にわたって書かれている。

改めて考えさせられることが多かったけど、流石は有川浩さん!という作品に仕上がっている。

有川浩ファンの方はもちろん、それ以外の本好きな方には、ぜひ読んでいただきたい一冊である。

 

倒れるときは前のめり

倒れるときは前のめり

 

 

*1:内容や成立過程はこちらの記事がわかりやすいかも。非実在青少年は、なぜ問題なのか?

*2:当時もその後も言っていた口

*3:1.読書の未来 2.単行本と文庫本