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~世界の片隅から~

NHK連続テレビ小説『虎に翼』を観ての感想

4月から始まった、NHKのテレビ小説『虎に翼』。
前作の『ブギウギ』とほぼ同時代の話なので、時代背景は非常に馴染みのあるものとなっていると思う。
まだ始まって2週ではあるが『虎に翼』を非常に面白く観ている。

www.nhk.jp

 

昭和6年(1931年)を開始としているが、この前年には世界恐慌の影響が日本にも及び所謂昭和恐慌が起きており、この昭和6年は満州事変が起きた年である。日本がその後長く続く戦争への第一歩を歩んだ年なのだ。
しかし、まだ大正時代に育まれた大正デモクラシーの雰囲気は残しており、主人公の寅子たちが法曹界へ飛び込む下地は作られようとしていたのである。
ただ、ここから時代は真逆の軍国主義へ向かうのだから、その中で主人公たちがどう時代を切り開いていったのかが今作の見どころだろう。

 

ただ、今作ですでに「これは!」と思った点がある。
それは学友の中に崔香淑という朝鮮からの学生がいることである。
ちなみにNHKの紹介の中では「朝鮮半島からの留学生。」とあるが、厳密にいえばこの当時は朝鮮は日本の植民地なので、留学生という扱いでいいのかは疑問である(なにしろ、日本国の一部なのだから)。


そこはさておき、昭和、特に戦前期を対象にした朝ドラはかなり多く制作されているが、自分が観た中でも、ここまで朝鮮人とわかる配役をおいたのは初めてである気がする(全作をみたわけではないが……)。
日本が朝鮮を植民地にした後に多くの朝鮮人が職を求め日本に来たことは知られている事実である。
しかし、まるでその事実はなかったかのように朝鮮人が朝ドラで描かれことはほぼなかったはずである。
その意味において、この朝鮮人の学生という配役は画期的な出来事であるように思う。

 


この崔香淑が同級生および上級生に表面上は差別的な扱いをされていない(とはいえ、扱いにくいという立ち位置ではあるが)ところは、都市部のインテリ層の育ちの良さ、さらに時代背景というものが反映されているのであろう。
この学生が今後どのような描かれ方をしていくのかは、一つ興味なところではある。

 

この2週で既に過去のものとされてはいるが、未だにその考え方が社会の根底に根深く残っている戦前の家族制度から切り込んでいく本作は、いろいろな意味で意欲的な作品になる予感がして、今後の半年が楽しみである。